和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

いまは懐かしい「ウレぴあ総研」文房具コラム・執筆チーム

早いもので4年が経とうとしています。「ぴあ」のウェブ媒体:「ウレぴあ総研」。ここで2011年の初冬から2012年の夏頃まで文房具をテーマにしたコラムを書かせて頂いておりました。いや、わたしひとりでの執筆ではなく、4人でのチーム制でした。今回は当時をふり返って少し書いてみようと思います。

 

・楽しい思い出「ウレぴあ総研」のコラム
・お知り合い4人でのチーム執筆に
・結果「文房具関連コラム」の勉強になりました

 

早川書房さんから拙著:「文房具を楽しく使う」シリーズの文庫版を出させて頂いた2010年からの数年間は、私も元気で、ステーショナリープログラム名義でのイベントをいくつか開催するなど「外向け」の活動を進めておりました。そのようななか、私達世代にとってはエンターテインメント関連のチケット取り扱いで有名な「ぴあ」が運営しているウェブ媒体:「ウレぴあ総研」の編集長様より、文房具をテーマにしたコラムを執筆しないかとの有り難いお声掛けを頂戴したのです。

 

紙媒体でのコラムを単発で書いたことはありましたが、これは週に1回ペースの連載です。もちろん「紙ではなくウェブだから気軽」ということは決して無く、コラムに一定の「品質」を維持するための検討をすればするほど、当時の自分には負担が大きいことが予測出来ました。

そこで私から編集長様に「複数メンバーによるローテーション形式での執筆」が出来ないかご相談をしてみたのです。そうしましたらなんと、私からの無理なお願いを快諾してくださり、これからお話しします、チーム制・ローテーション形式での執筆が実現しました。

 

まず最初に大事なのは、どのような執筆チームを構成するかです。出来ればライティングのプロやご実績のあるかた、または私には出来ない能力を発揮して頂けるかたにお願いしたいと考えました。そこで当時、イベント等で交流のありました納富廉邦さんにご相談。納富さんは文房具に限らず、あらゆる趣味のジャンルについての記事やコラムを執筆されているプロのライターさんです。まずは納富さんに基礎固めをしていただこうと。

次にお声掛けしたのは銀座の筆記具専門店「五十音」(現「銀座ペンシルミュジアム」)のオーナー、宇井野京子さんです。宇井野さんは長い間、ANAの機内誌「翼の王国」で連載をされてきたかた。万年筆風補助軸「ミミック」の共同開発を通じてモノを捉える目利きとしてのセンスは存じ上げていましたし、また美術品への造詣も深く、文房具というキーワードを高めてもらえるのではと思い、お力添えをお願いしました。

そして俳優の伊澤恵美子さんです。伊澤さんはこの時以前に納富さんからのご紹介がきっかけでお知り合いに。ところで私はこれまでずっと、文房具を「ユーザーエンパワーメント」という枠組みで考え、活動してまいりました。つまり文房具の世界を、メーカーや流通など業界側から見るのではなく、たとえ微力でもユーザーからの気持ちで動かすことができたらと願ってきました。伊澤さんは、文房具製品をどのように解釈するか、あるいはどう組み合わせて使ってゆくかについての「勘」が鋭敏で、単にお詳しいというだけでなく「良き文房具ユーザー」としてのポテンシャル(=潜在能力)が高い印象でした。またメーカーのイベント等でもお招きをして私の想いを的確に表現して頂くこともありました。伊澤さんのユーザーとしての視点をもっと知ってみたかったことから、執筆チームへのご参加を打診しました。

 

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ウレぴあ執筆チームの4人が揃って展示会を取材した際の写真。この写真はウレぴあにも掲載されました。左から納富廉邦さん・宇井野京子さん。右から私と伊澤恵美子さん。(年2回開催されている「文紙フェア」の会場にて。中央は文具メーカー、オート株式会社の高橋代表取締役。)

 

いよいよ2011年の初冬からコラムは開始されました。週イチを4人で回すのですから、基本的に月1回の執筆で済みます。ところがこれが意外とたいへん。当時はメインの3つの業務に加えイベントの準備や各地への行商があり、それらの中で落ち着いて「原稿を書く脳」への切り替えがなかなか出来ず、気がつくと締め切りが間近に迫っていました。また単純な「モノだけの解説」に終わらせることなく、できるだけ文房具と人とを繋ぐ文章を書きたいと思うので、なおさら時間がかかりました。執筆の依頼をひとりで受けず、チーム制にして良かったと何度思ったことか。

 

※ メンバーの当時の各記事は googleの「ウレぴあ総研 メンバー名」(→メンバー名のところに和田哲哉とか入れてください)で検索し、読むことが出来ます。

 

納富さんはさすが執筆のプロ。広大な知識を元に変幻自在の文章が現れてまいります。また、数を呼び込めるテーマの取り上げ、コンテンツの読者への訴求力の高さなどが保たれており、執筆陣の中でいつもトップのアクセス実績がありました。

宇井野さんの「出来るだけ日常から遠いところで遊ぼう」という取り組みも新鮮でした。「縁起文具」・「忠臣蔵」・「正倉院」など予想外のキーワードが次々に飛び出し、それらと文房具とのカップリングはとても興味深いものでした。

伊澤さんによる、ユーザーとしての文房具への取り組みは、地に足が着いているという表現がふさわしく、多くの読者の共感を呼んだようです。ウェブページの読者に「私もそう思う」と感じさせるのは大切なことだと思います。実際、4人の中で納富さんに次いでアクセス数2位をたびたび記録していたのは伊澤さんだったのです。

  

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「ウレぴあ総研」でのコラムは2012年の夏ごろまで続き、ひとりあたり8本ほど出稿して、ようやく感覚が掴めてきたところでした。しかし、コラムの進め方や各内容についていつも私達に任せてくださった編集長様が退任され、体制や条件に移ろいがあったことをきっかけに、4人で合議して、以降のコラム執筆を辞退させて頂くことになりました。

 

結果として短い期間でしたが、執筆者の皆さんそれぞれが新しいことを試し・楽しみながら制作していたことは各コラムを通してわかりました。また私は、文房具をどう「料理」するかについての様々な考えや手法をメンバーの皆さんから学ばせてもらいました。

では、この活動によって文房具というキーワードの地位が高まったかと言われると自信は無いのですが、そのための多くのヒントやきっかけを生むことは出来たのではないかと評価をしています。

 

ここ最近の多くのウェブメディアが向かっている効率重視の姿勢を見るに、当時の「ウレぴあ総研」で経験させて頂いた、ちょっと贅沢なトライアルは今はもう出来ないだろうと思えて残念ではあります。けれども今後なにかの機会がありましたら、当時のメンバーでまた活動ができたらと願っております。

 

おまけ:

当時のステーショナリープログラム関連のイベントレポート

・「 sprgトークライブin西麻布(2011年2月) 」

・「 sprgトークライブinマルマン(2011年4月) 」

・「 革小物・革ナイト(2011年6月) 」

・「 Thinking Power Factory(2011年10月) 」

・「 ハンズサーカス(2012年8月) 」