和田哲哉・LowPowerStation

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調べてみた:銀座に七福神は存在するの?

  

銀座では毎年11月になると地域に複数ある稲荷神社をめぐり歩く「銀座八丁神社巡り(ぎんざはっちょうじんじゃめぐり)」が開催されます。三日間の会期で三千人近くが参加する人気のイベントです。

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銀座四丁目にある「宝童稲荷神社」

  

私はこの銀座八丁神社巡りの期間中に合わせて催事出店することがあって、多少なりとも地域の事情を見聞きしているのですが、最近気になることがありました。

  

日本テレビ系列の「ZIP」という番組でタレントさん達が「銀座七福神」をお参りするという企画が放映されていたのです。

銀座にはさきほどの「銀座八丁神社巡り」のとおり、十箇所以上の稲荷神社があります。番組では「銀座七福神巡り」と称して銀座のいくつかのお稲荷さんに「朝日稲荷→弁財天様」、「宝童稲荷→布袋様」などが宿っているとテロップ入りで説明がされていました。

  

しかし私は、銀座のお稲荷さんに七福神などという由緒(ゆいしょ)を聞いた憶えがありません。

ひとまずウェブでササッと検索してみました。すると、たしかに銀座七福神というキーワードでお人形や御朱印スタンプなどの画像が出てきます。でもさらに調べてみますと…。

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宝童稲荷さんの由緒が書かれたプレート

  
以前にこの地域で行われていた「大銀座祭り」に関するページが見つかりました。この祭りの「イベントのひとつ」としてウォークラリーが企画され、当時のイベント運営者がいくつかのお稲荷さんに七福神の名を「臨時にあてがい」、歩いてまわった人たちに御朱印風の紙片を配布したり、七福神のお人形を販売していたようなのです。

このウォークラリーは何度か開催されましたが、イベントの開催時期によってお稲荷さんと七福神との対応が変化していました。例えば本ページ冒頭にある写真の「宝童稲荷神社」においては、初期の頃は「布袋尊」が祀られているとされていたものが、のちには「福禄寿」へと変更されています。こうした記録からも「銀座七福神」が地域の由緒には基づいていないことは明らかです。

大銀座祭りは2000年に終了となり、「臨時の七福神イベント」も無くなりました。

  

ここからは地元の方々に聞いたお話です。2000年以降、どこかの団体?が銀座のお稲荷さんに七福神が宿っているかのような勝手な広報活動をしたり、有料の七福神ツアーを企画したり、お稲荷さんに七福神の絵入りのシールを貼ったり(→迷惑行為)ということが続いたようです。また以前には読売新聞が銀座のお稲荷さんに七福神の由緒が有るとする記事を書いた事もあったそうです。

こうした迷惑行為や誤報、恣意的な虚偽情報について、銀座エリアの町会・商店会をとりまとめている最大組織「全銀座会・銀座通(ぎんざどおり)連合会」がその都度抗議や否定の申し入れをしてきたとのことでした。(全銀座会はウェブサイト「GINZA OFFICIAL」を運営しています)

  

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宝童稲荷神社に奉納された幟(のぼり)

きっかけはどうであれ、お参り自体は信心としてはもちろんのこと、お稲荷さんの繁栄や地域の活性化になるのですから良いことと思います。でも元々由緒が無かったものに勝手に名付けをしたり、メディアがなんら事実確認もせずに誤った情報を拡散させるのは望ましいことではありません。

  

どこのどなたが画策しているのか、いまも「銀座七福神」や「銀座七福神巡り」で検索すると、あたかも由緒があるように、あるいは事実を巧みにすり替えて説明をかぶせてくるもっともらしい散歩ガイドや観光ツアー等のウェブページがしつこく出てきます。

無いことを流布する人や団体は、その街にお世話になっているのにもかかわらず街の歴史を敬う心が無いということです。なによりお稲荷さんに対してバチ当たりですよね。

  

ウェブの世界では誰かがフェイク情報を広めるのはじつに簡単なことで、それがいつのまにか事実のようになってしまうのです。反対に虚偽の情報を打ち消すのには途方もない手間を必要とします。本当に無駄なことです。それでも、ひとつずつ丁寧に直してゆくしかありません。

皆さんお気を付けて。

  

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