和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

「イケフェス大阪2018」(後編)

先日の記事の続き。
イケフェス大阪の後編です。

90ヶ所以上ある見学施設の幾つかは予約制になっていましたが、タイミングが合えば各施設の見学待ちの行列に滑り込むことが出来て、気まぐれに散歩していても多くのビルの中を見ることができました。特に写真の大阪瓦斯ビルヂングに入れたのはラッキーでした。

ビルは工事中で周囲を幕が覆っていたので昔の写真を。

  

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大阪瓦斯ビルヂング(街にあった掲示板から)

本館は現在も大阪ガスの本社になっています。設計は安井武雄氏で1933年竣工。ほぼ当時のままと言える1階ホール、現在も営業しているレストラン(一般客の利用も可能)、屋上などを親切丁寧なガイドさん(→大阪ガスのかた)の案内でゆっくりと見させてもらいました。

  

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大阪ガス1階ホールのエレベーター

館内はリニューアルされた部分と保存部分が混在。ビルのファサードを模した館内の飾りや昭和初期の街灯として使われたガス灯、竣工当時と変わらない外壁のタイルなど見どころがいっぱいでした。

  

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ガス灯

屋上では周囲の新しいビル群も観察。東京駅付近と同様、御堂筋両側のビルの高層化も実感できます。

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大阪ガス本社ビル、屋上見学の様子

  

日建設計の大阪オフィスも一部公開されていました。

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公開されていた日建設計大阪オフィスのパネル展示スペース

日建設計は日本でトップクラスの設計監理会社だそうです。ゼネコン(=大手建設会社)にも設計部門はあるわけですが、複数のゼネコンが参加するような巨大なプロジェクトの場合、建設会社と利害の関係が無い独立した設計会社が担当することになります。日建設計は誰もが知っているような大規模な建設プロジェクトを担当する場合が多いとのこと。そういえば東京オリンピックのニュースでこの会社の名前を見聞きしたことがありました。

私のような、ひごろ建築に関わりの無い者にとって「日建設計ってどんな会社?」を知るのに本当に有り難いオフィス公開です。

今回の会場のテーマは「日建設計イラストレーションスタジオ」。いただいたパンフレットによると「 ~日建設計には、手描きのイラストを描く専門チーム”イラストレーションスタジオ”があります。わたしたちは様々な、”what does do it loolk like ?”を絵にするサービスをご提供します~ 」。

つまり、「設計」より前の段階。「ここがこれからどうなるの?」を絵にして、プロジェクトの関係者にイメージをしてもらうための作業を担っているのだと思います。

昨今CGが全盛ですが、手描きだから伝わるということも有るのでしょう。実際、私もCGだとついつい流し見をしてしまいます。でも人が手で描いたものだと知ると木の1本1本まで見入ってしまいます。

  

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建築前に描かれるイメージスケッチ

さきほどの一文を改めて見ますと「手描きのイラストを描くチーム」とわざわざ明記されています。会場には、現在でもこのように使われているというスタッフさんのデスクを再現した展示がありました。まさかここでこんなに良い物を見られるなんて!

  

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イメージスケッチを描く際に使われる用品の再現

壁面にあるひとつの巨大なイラストに目がとまりました。これ、中野サンプラザ。パネルには「1972年作画」のプレートが付いています。サンプラザの開業は1973年6月なので、このパネルは建築が開始されてから、サンプラザの機能を紹介するために作られたのかもしれません。

  

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中野サンプラザ、イメージスケッチ(1972年)

見どころは細部まで描き込まれた内部施設の様子です。他のブログでもこの「作品」に注目していた人が居られました。パネルの実物を見てしまったら言及せずにはいられない。そういう感じの細密な作品です。

  

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中野サンプラザ、ホール部分(その下はプール)

私は下の絵の制御室(?)がお気に入りです。

  

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中野サンプラザ(部分)細かい所まで描かれています

日建設計では7階のラウンジも開放してくださりました。飲み物が振る舞われ、建築の専門書を見ながら休憩。休日のオフィス街で喫茶店はどこも閉まっていて、歩いてばかりだったので本当に有り難い。ちょうど関西国際空港関係の書籍があったので読ませてもらいました。そして再び散歩を再開です。

  

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「青山ビル」廊下部分のアーチ

古い建築物の見どころは、建築当時ならではの素材、当時の流行を知ることができる様々なレイアウト、そしてディテール(=細部)のあれこれです。

階段のような共通スペースから事務所エリアへと入る「境界」を天井からのアーチで表現しているなど、時間をかけて見るほど多くの発見があります。

  

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生駒ビルヂング

つまり、同じビルでも何度も訪れたほうが良いということ。今回は公開施設の1割ほどしか回っていません。来年以降のイケフェスにも行けたらと思うところです。

  

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生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2018公式ガイドブック

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