和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

三菱鉛筆・ユニボール シグノRT1とパイロット・ジュース アップ

( 2017年11月8日に加筆修正しました。 )

  

ご無沙汰しております。
今日は自分へのメモ代わりに書きます。

 

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上:ジュースアップ / 下:ユニボールシグノRT1

  

三菱鉛筆のゲルインクボールペン「ユニボール シグノRT1」の0.38mmを愛用中でして、事務所にも自宅にも、バッグの中にもと、計5~6本を各所に「配備」しています。

この製品の良いところは、ペン先と紙面の間にあるインクの液面が切れているよう(→あくまでイメージ)なカリッとした書き味ながら、インクの描線(特にエッジ)が美しく、黒色のムラが無く、ペンを引き上げた瞬間のキレが良く、インクの粘りやミクロな糸引きも無い点です。インクの湧出量は潤沢でも不足でも無く「抑え目の適量」。総じて私は、RT1 0.38mmを「accurateなゲルインクボールペン」と呼んでいます。

また、カリッとしつつも意外に紙面を選ばず、ノートや手帳はもちろんのこと、2枚程度の複写伝票なら「RT1のままでよい」と思わせる不思議な適応力も見せてくれます。どちらかと言うと、インクの吸いが少し悪い硬い紙面を好むかもしれません。

 

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ジュースアップの0.3mmと0.4mm

 

その後、RT1のライバルになると思われる極細ゲルインクボールペンが登場しました。パイロットのジュースアップです。0.3mmと0.4mmの黒色を、各複数本購入しました。0.4mmが、RT1の0.38mmのペン先に相当する感じです。

3ヶ月ほど使いました。噂どおり、ジュースアップはRT1より一段滑らかです。極細のペン先ながら、さきほど申しました「液面」が切れていない感じ(→私のイメージ)で、「紙面を、ペン先がインクの上に乗った状態で走っている」感覚があります。

娘にもこのジュースアップをあげたところ、気に入っている様子。

 

しかし。

ジュースアップ0.4mmは、1文字書く毎にペン先を引き上げた瞬間のキレが(あくまで対RT1比)で少し良くない気がします。いや、悪くは無いのですが、どこかが良くない。極細だから気になるのかもしれません。あと、インクの用紙への定着が少々不安。

たとえば、極細の鉛筆で淡く下書きをして、そのあとゲルインクボールペンで清書をして、最後に字消しで下書きを消す。という場面ではRT1のほうが安心。

 

結果、どちらが良いというのではなく、これまた文房具製品にありがちな「トレードオフ(=あちらを立てればこちらが立たない関係)」で、結局両方持ち歩いている状況です。

残念なのは、ジュースアップの本体軸は、透明パーツや金属パーツを盛り込んだ豪華仕様なのに、筆記の際のペン先の収まり?落ち着き?が悪い。RT1もジュースアップも極細のペン先なので、そのぶんペン先のガタつきが気になるのは仕方のないことです。けれども、そのガタつきかたはRT1では筆記に邪魔をしない。一方のジュース アップはこれが気になってしょうがない。あとジュースアップはノック毎にこのガタつきの感触が変動する感じもあります。

いろいろ試してみると、ジュースアップの、グリップ部分の太さが口金近くまでストレート(=同じ直径)かつ太いため、無意識のうちにグリップの先端をつかんでしまい、その結果ペン先が紙面に当たる角度が立ち気味になって、ペン先と口金とのガタつきが感触として顕在化している感じです。

RT1もかなり先端をつかんでいるものの、替芯の先との口金とのフィッティングが良いのか、それほど気になりません。

 

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ITOYA110(上)にジュースアップの替芯を装着

 

このあたりを確認するために、替芯のサイズが似ている同社のフリクションボール・ノックタイプと、パイロットと伊東屋が共同開発した「ITOYA110」にジュース アップの替芯をセットしたところ、ジュースアップと同様にグリップ部分が太いフリクションボールではあまり改善が見られないのに対し、ITOYA110では、この筆記具のために作った替芯かと思うほどに快適に書くことができました。ITOYA110は口金に向かってグリップ部分の直径が細くなってゆく形状をしています。

念のため、何も考えずに筆記具をつかんで文字を書き込んだ直後の、人さし指とペン先との距離を測ったところ、ジュースアップは20mm、フリクションボールは21mm、ITOYA110は23mmでした。ITOYA110だと筆記角度が浅くなるのかな。

ついでに言いますと、ITOYA110のこの形状と筆記角度との相乗効果なのか、ペン先の周囲がよく見渡せて、筆記の快適さをさらに高めています。

 

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(上から)フリクションボール/ITOYA110/ジュースアップ

 

ジュースアップ含め、今回のパイロット系軸3本ともに、替芯の垂直方向の当たり(替芯の尻の部分が軸の奥に接触する部分の感触)や、替芯の口金の内側への触り(手指に感じる硬度やガタつき感)がRT1の筆記時に比べて微妙に良くないのも、気になりました。…ITOYA110は少し良いかな。

もしかしたら、インクのキレが悪いと感じたのも、インクが原因ではなく、ペン先を紙面から上げたときのペン先のブレがそう思わせているのかもしれません。未確認。

 

多くの人が「滑らかで凄い」と思っているとしても「滑らかインク=常に正解」ではないです。ジュースアップの滑らかインクは技術的に凄いと前置きした上で、5mm方眼の中に1文字ずつ「留めるような」書きかたをしたい時には、ジュースアップ0.4mmよりもRT1がちょうど良い感じです。また替芯と軸とのフィッティングの良さから来る筆記感(*注1)でもRT1は良いところに収まっている印象です。0.3mmは、私にとってはインクが出なくて描線も細すぎかな。

三菱さんは安易にRT1のインクを滑らか系に変えたり、本体軸のマイナーチェンジを実施しないで欲しいなと思うところです。

 

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ITOYA110にジュースアップ0.4mm替芯を入れると、まるで筆のごとく…。

 

それにしても、ITOYA110にジュースアップ0.4mm替芯をセットし、本体軸の少し後ろのほうをつかんで軸を思いきり寝かせて書くと、ペン先からのインクは潤沢、書き味は至極滑らかで、極細の筆ペン(もちろん筆ではありえない細さ)を手に入れたようです。大きな紙に計画を書き込むような場面に大活躍。短時間のうちにアイディア出しがどんどんとはかどりました。なので、ITOYA110とRT1の2本持ち態勢です。

 

*注1:「筆記感」

評価内容がとかくペン先のミクロな部分に集中してしまう「書き味」だけでは言い表せない、筆記具の総合的な書きやすさを表現することを目的に私が1997年に定義し、以降、私のウェブサイト「ステーショナリープログラム」で意識的に使ってきた用語。この用語、今では筆記具関連の記事やメーカーの公式サイトなどで当たり前のように使われていますが、「筆記感」と「書き味」との意味合いの違いを理解して使い分けている人は少ないと思います。

 

 

ITOYA110 イレーサブルボールペン【ネイビー】 IBPNV

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