和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

NC機として納得の完成度。SONY WH-1000XM2

ひさしぶりにヘッドフォンの話題です。

@masawada さんが2017年10月に発売された「WH-1000XM2」を買ったので、年末年始に試聴させてもらいました。

  

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SONY WH-1000XM2

  

本機は高性能のNC(ノイズキャンセリング)機能と(一定条件下において)ワイヤレスでもハイレゾ相当の高音質を実現するなどの特徴で評価を得た「WH-1000X(2016年10月発売)」のマイナーチェンジ版です。ソニーのワイヤレス(Bluetooth)ヘッドフォンとしてのトップモデルになります。

初期モデルとの違いは「バッテリー駆動時間の大幅延長(20→30時間)」、「NCの動作を最適化するパーソナルNCオプティマイザーに周囲の気圧を測定する項目を追加」、「操作ボタン数とUIの一部変更」、「ケース側面の表面処理の変更」など多岐に渡ります。

あいにく初期モデルは店頭での短時間の試聴しかできなかったので新旧での音質的な比較は出来ませんが、このM2自体はゆっくりテストできました。

  

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見た目においても「雑音を排した」という感じのクリーンなデザイン

  

外観はディテールに陥らず光り物のパーツを使わず全体のmass(塊)で魅せる、近年のソニー製ヘッドフォンのテーマにそったもの。頭に装着した際のユーザーとの一体感があります。WH-1000XM2は上級モデルということからか、ドライバー(=スピーカー部)のハウジングはシボ(革のような凹凸)のある表面仕上げになっていて、質感を高めています。ただ、ハウジングもヘッドバンドも、この仕上げだと毎日使って2年~3年目でヤレそうな予感は多少あります。

耳をすっぽりと覆うオーバーイヤータイプのヘッドフォンなので全体に大柄ですが、ドライバーのハウジングもヘッドバンドも頭部に近接してフィットするようデザインされていて、装着時にはあまり大仰な印象にはなりません。

  

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ゼンハイザーのMomentum Wireless と並べた様子。
WH-1000XM2の構成パーツは大型だが頭部装着時にはコンパクトに見える

  

今回の比較機は自分のゼンハイザー Momentum Wireless です。

まずは定評のNC性能について。NCによる静けさはMomentum Wirelessより明らかに上です。エアコン等が発する中低音成分の大幅低減は勿論のこと、付近の人たちの会話やテレビからの音声もかなり減衰させています。大型かつソフトなイヤーパッドも遮音性の高さに貢献していると思います。WH-1000XM2の良さはこのNC性能の高さから始まります。最初にこれだけの静けさが確保されるのですから、音質的にもかなり有利です。

あえて静寂な部屋で確認するホワイトノイズ(=サーッという音)。ホワイトノイズの少なさが特徴の Momentum Wireless とほぼ同程度でした。もちろん街中では全く問題の無い優秀なレベルです。

  

音質について。今回は特別なコーデック(信号伝送方式)を選択せず、そのままiPhoneとBluetooth接続しました。

最初に気になったのがデフォルトで設定されている低音のブースト量。私には少々過剰でした。店頭で聴かせるのにはこの位の低音を出しておいたほうが売れるのかもしれません。有り難いことに低音の量感はソニー公式のiPhoneアプリ「Headphones Connect」上の「Clear BASS」という項目で独立して調整が出来ます。私はClear BASSをマイナス2~3に設定。これでちょうどよい感じを得ました。

  

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ソニーが提供するiPhoneアプリで音質コントロール

  

ドライバーの直径は40mm。ドライバーが正確に軽やかに稼働しているのが分かる緻密な高音ともっさり感の皆無なボーカル、ハイスピードな低音を堪能できます。全音域にクセなく高音質なので曲を選びませんし、曲や音楽ジャンル毎にイコライザーを微調整する必要もほとんどありません。オーバーイヤータイプにもかかわらず音源と耳との距離が近くに感じられ、音楽に没入できます。

なによりNCがしっかり効いているので、どの曲でも快適なラウンジで聴いている感じがします。細部はともかく大枠として Momentum Wireless の音質も優れているものの、音楽を聴く環境をしっかり整えているという意味で、NCの能力の差でWH-1000XM2にはかなわないという感想です。

   

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耳が痛くならない大型のイヤーカップ

  

今回は手元の Momentum Wireless との比較でしたが、ソニーとしては本機のライバルはBOSE QCシリーズのはず。またそれ以外のメーカーからもQCクラスの対抗モデルが次々に出ている状況になっています。WH-1000Xシリーズは強力なNC機能と誰にも文句を言わせない正統派の高音質設計、長時間のリスニングでも快適な装着感を備えつつ、2016年の初期モデル発売からちょうど1年目でキッチリと必要な箇所をブラッシュアップさせ、全方位的に勝ちを取りに来た感じです。

ゼンハイザー好きの私としては Momentum Wireless 以降に良いモデルが出なければこれを買えばオッケーという安心感で見てしまいました。