和田哲哉・LowPowerStation

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ゼンハイザーHD25シリーズのリケーブルについて(基礎編)

  

これまで何度か、拙ブログにおいてゼンハイザー(SENNHEISER)のヘッドフォンHD25シリーズのリケーブル(=ヘッドフォンケーブルの交換)に言及してきましたので、ここで一度、専門外ではありますがおさらいをしてみます。

  

1.リケーブルする目的

通常ヘッドフォンは、それ単体で完成された製品のため、ケーブル部分だけを交換することはありません。しかし一部の製品ではヘッドフォン本体とケーブルが別体になっていて、ケーブルだけの交換が可能です。

この場合、なぜケーブル交換をするかと言うと、次のような理由が考えられます。

  

ア:ケーブル内の銅線が断線しての交換。
イ:より良い音質を期待しての交換。
ウ:色違い等、見た目の変化を目的としたもの。
エ:使用目的に合わせた最適なケーブル長さにするため。
オ:使用目的に合わせた最適なケーブル種別にするため。

  

有線タイプのヘッドフォンの場合、主な消耗品はイヤーパッドとケーブルですので、メーカーの修理に出すことなくケーブルを交換出来る、つまり「ア」が実現するだけでも有り難いものです。特にインナーイヤータイプのヘッドフォン(イヤホン)においては細いケーブルを採用する場合が多く断線する頻度も高いため、簡単にリケーブル出来る製品が増えています。もっとも、最近はBluetoothで音楽プレーヤーと接続するケーブルレスタイプのヘッドフォンも増えていますが。

いっぽう、ウチのブログにて数多くの検索~参照があるような、ウェブ上で活発に動きがある「リケーブル」とは上記のうちの「イ」から「エ」あたりがユーザーの興味の対象になっていると思います。

  

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ウチのゼンハイザーHD25(私と娘と息子の計3台)

  

2.HD25シリーズのリケーブル

私が12年近く愛用しているゼンハイザーのヘッドフォン「HD25-1 II」は、ヘッドフォンの音が鳴る部分である左右の「ドライバー」から音楽プレーヤーに接続する「ステレオミニプラグ」までのケーブル一体がごっそりと交換できるタイプです。これはHD25シリーズが放送業務用、あるいはDJ向けに開発(製品の箱にもDJ向けと明記されています)されていて、イヤーパッドだけでなく、ドライバーやケーブル、ヘッドバンドまでユーザーが個別に購入し交換できるメンテナンス重視の設計になっているからだと思います。

またHD25シリーズでは、よりDJ用途に特化した、カールコードタイプのケーブルを備えたモデルもメーカー自らが用意しています。

  

HD25シリーズは発売開始から20年以上が経っていて、早い時期から海外において音質向上を目的としたサードパーティー製のケーブルが出回っています。

日本でHD25向け交換ケーブルの供給元として最初に浮かぶのは、電線や各種パーツを開発・販売している「オヤイデ電気」さんです。オヤイデ電気は以前は古河電工のPCOCCという銅素材を使ったHD25用ケーブルを供給されていましたが、PCOCCの生産終了によりしばらくブランク期間があり、その後新たな導体を用いてHD25用ケーブルを復活(本記事執筆現在)させました。私もこの復活となったオヤイデ電気の「HPC-HD25 v2」を使っています。

  

やる気があれば、単体のケーブルや端子類を手に入れてHD25用ケーブルをイチから手作りすることも可能です。この場合のケーブルや部品類も秋葉原にあるオヤイデ電気の実店舗に行けば購入が可能と思われます。あとは電子工作の聖地、千石電商でも揃えることができます。

ウチの娘のヘッドフォン「HD25-ST」のリケーブルは単体部品から組み上げました。(本当は既製品で済ませたかったのですが、諸事情から手作りせざるをえませんでした。)

  

3.リケーブルの選択肢

HD25シリーズのリケーブル実施方法にはいくつかの選択肢があります。

A:サードパーティーの既製品を買って付ける
B:個別の部品購入から手作り
C:標準ケーブルや既製品の一部を改造して使う

  

「A」が一番簡単な方法です。そもそも海外でのHD25のリケーブルはここから始まったようなものです。個人事業主に近い手先の器用な職人(?)が、標準ケーブルよりも高性能(と思われる)ケーブルを用い、HD25にそのまま装着できる状態に組み上げ商品化した物をユーザーが購入します。ユーザーの希望によりケーブルの種類や色、長さ、プラグのグレードなどを選べるものもありました。先述のオヤイデ電気の「HPC-HD25 v2」も既製品のひとつです。

これを購入すれば、ユーザーは手先と小型のドライバー(=ねじ回し)だけで15分ほどでリケーブルできます。

私はこれまでHD25用の既製品ケーブルを4回買っています。音質が変化するのはもちろんのこと、見た目が変わったりケーブルがしなやかになったり、結果は様々でした。

オヤイデ電気以外でも作家さんや職人さんにより製作されたケーブルを販売するサイトも少しずつ出てきています。

HD25に最初から装着されている標準ケーブルも製品の製造時期やバリエーションによって使われているケーブル素材は様々で改良もされているでしょうから、サードパーティー製にリケーブルしたからと言って必ず音質向上を得られるとは限りません。しかしケーブルの色違いやプラグの部品違いなど見た目の変化も楽しめますので、標準ケーブルの質感が気に入らなかったり断線してしまった時にでも購入してみるのは良いかと思います。

  

次の「B」は、ケーブル、プラグ、ドライバー側のコネクターまで部品単位で購入し、自分で作ってゆく方法です。メリットは自分の好きなケーブルを選べる自由度の高さです。でもハードルは高いです。まず部品の入手性。特にドライバー側のコネクターはゼンハイザーHD25やHD650が採用している特殊なタイプで、日本での価格がワンペアで2千円以上することがあります。このコネクターはハンダゴテで熱を加え過ぎると溶けてしまったりして工作も難儀。一般的に手作りは安く済むものですが、ことHD25のケーブルについては既製品を買ったほうがおサイフに優しいかもしれません。

音楽プレーヤー側につなぐステレオミニプラグとの結線(=ハンダ付け)も初心者には難しいものがあります。ハンダ付けする箇所は極小なのに放熱性の高い部品との結線になるため、ハンダゴテの熱容量は比較的大きなものが必要。しかもそのためにハンダ付けの理想のタイミングはそこそこ習熟を重ねた人でないと難しいものがあります。そこで使う糸ハンダの種類もちゃんと選びたい。失敗覚悟で2~3個練習したいところですが、ステレオミニプラグも高い物は1個で千円位します。

ですので、「A」や後述する「C」ではどうしても解決できない時の最終手段が「B」になると、私は考えています。

  

「B」より少しハードルが低いものとして「C」があります。既製品や、製品に最初から備わっている標準ケーブルを流用し、そこに必要最小限の改造を加える方法です。

先日の私の「HD25のBluetooth化」では、HD25のヘッドバンドに取り付けたBluetoothレシーバーとの接続のため、標準ケーブルを短く切り、そこにオヤイデ電気のL型プラグを付けるということで「C」を実施しました。引き出しに眠っていた標準ケーブルに千円少々のプラグを付けるだけという予算でBluetooth化への準備ができました。

しかし標準ケーブルを流用する際には思わぬ落とし穴があります。さきほども述べましたが、標準ケーブルはHD25本体の製造時期やシリーズのバリエーションによってケーブル素材の種類が結構変わっているのです。HD25-1だけでも、昔はコールド線に網線を使っていたのが今回は並行2線へと変わっていました。またHD25-STのケーブル素材ではホット線が特殊な撚り線(よりせん)だったため流用ができず止むなく放棄しました。標準ケーブルは「切断してみないと中味が分からない」という怖さがあるのです。幸い「HD25のBluetooth化」では並行2線だったので改造作業が本当にラクでした。

   

ということで、HD25のリケーブルは「可能」であり「手順は簡単」に見えますが、「A」以外の方法は結構大変ですので、覚悟をしてください。

  

4.HD25のBluetooth化

以上から、選択肢「C」の実施となった先日の「HD25のBluetooth化」の作業を振り返ってみます。

 

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今回はHD25に標準添付のケーブルを改造

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ワイヤストリッパで被覆を取ると並行2線×2と判明

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プラグはオヤイデ電気のL型(P-3.5 SRL)に

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プラグのターミナルとケーブル芯線の位置合わせ

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工程を進める毎に芯線の長さを微調整

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芯線をターミナルにハンダ付け

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工業用ドライヤーで熱収縮チューブを収縮加工

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ケーブル短縮&L型プラグ取り付け完了

  

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標準ケーブルを短縮化し簡易Bluetooth化を実現したHD25

  

    

5.最後に

改造ができる数少ないヘッドフォンとしてゼンハイザーのHD25シリーズはとても楽しめる「教材」です。しかもその音質は私が長年愛用するくらい気持ちの良いもの。

心意気と腕に自信があれば部品レベルからの加工&リケーブルを楽しまれても良いかと思います。そのためには

・加工する部品を確実に固定できる万力付きのスタンド
・適切な熱容量のハンダゴテ
・良質な糸ハンダ
・失敗した時のハンダ吸い取りネット
・ニッパー
・ラジオペンチ
しっかりと作業できるピンセット
・配線確認用のマルチメーター
・熱収縮チューブ

このあたりは用意をしておきたいところです。

  

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