和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

高畑正幸 著「文房具語辞典」

「文具王」こと高畑正幸さんより新著をご恵送いただきました。

  

「 文房具語辞典 」
 文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く
(誠文堂新光社)

  

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高畑正幸「文房具語辞典」(誠文堂新光社)

  

本書は文房具に関わりのあるブランドや商品名、製品、ジャンル、素材、技術、その時々の流行りごと、関連する人々などのキーワードを幅広く取り上げ、五十音順に整えて収録したものです。誠文堂新光社ではこの本のほか「すし語辞典」、「プロ野球語辞典」、「コーヒー語辞典」など多くの「XX語辞典」を出してシリーズ化させています。

  

ページを開くと「カッターナイフ」や「サインペン」のようなお馴染みの言葉のほか、「製本テープ」や「フールス紙」といった見聞きはしているけれど改まって聞かれると答えに窮するようなキーワードも明快に説明がされています。

ほとんどの用語がツイッターでお馴染みの140文字前後で上手に説かれているのも感心するところです。昔の「受験生は天声人語を読め!」みたいに、物事を簡潔に説明することの勉強にもなるでしょう。

そして用語の解説と共にイラストレーター:小林麻美氏による数多くのさし絵が目に飛び込んできます。これらの絵は可愛らしいだけでなく大変に分かりやすく、各用語の理解をおおいに助けてくれます。数えたところイラストの総数は一冊で550点近くに及んでいました。イラストひとつひとつについて著者との意思合わせも必要でしょう。高畑氏の執筆だけでなく小林氏のアートワークも大変なものだったと想像されます。

   

高畑さんと言えば、テレビやラジオ、雑誌等におけるご出演数は文房具専門家のなかでもトップクラス。また文房具のコレクションはもちろんのこと、文房具をテーマにした書籍や資料類の膨大な所蔵数も関係者には知られているところです。そうした資料や知識、ご経験をアーカイブするものの一環としてYouTubeにも動画をアップされています。

だいぶ前のこと、高畑さんの活動を支えていると思われる「リソース」のひとつをご本人に少しだけ見させていただいたことがあります。それはMacBook内に蓄積されている文房具関連データベースの一部でした。私も以前とある仕事に際して過去30年間の書籍や小売店に関連する事象のデータベースを作ったことがありますが、私のそれを「1」としたら高畑さんのは「100」、あるいはそれ以上のスケールのものだった記憶です。今回の一冊も、このデータベースのパワーが発揮されているのかもしれません。

  

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小林麻美氏による豊富なイラストも「楽しみ」どころ

意外だったのは、本書に掲載されている用語の幅の広さと言いますか懐の深さです。前述のデータベースを拝見した限りでは「ガチガチの文房具情報」で固められていた気がしたのですが、今回は「赤道」や「京極夏彦」、「セレンディピティ」など一見すると文房具からは遠そうな存在の用語も登場しています。でも読んでみるとちゃんと文房具とつながっていて得心することたびたびで、編集の妙と言いますか、まだ文房具に興味を持っていない人や若い学生さん達など、より多くの人に手を差し伸べている一冊であることも感じました。

  

それにしても本書の登場以前と登場後とでは決して小さくはないフェイズの変化がありそうです。だれでもこれを読めば文房具についての広範で質の高い基礎知識を身に付けることができます。文房具の一般ユーザーと仕事で文房具に関わっている人達との間の知識差がぐっと縮まるのです。

ですので、いま文房具を専門にしている私たちはこれから、知識や情報の習得をよりいっそう進めたり、観察する心や様々なセンスに磨きをかけなければいけなくなるでしょう。

  

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文房具語辞典: 文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く

文房具語辞典: 文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く

  • 作者:高畑 正幸
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2020/01/14
  • メディア: 単行本
 

   

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