楽しみにしていた作品集が届きました。
「 線路沿い街歩き 」です。
街歩きイラストレーター:小川真二郎氏の作品集。
日本各地の街と鉄道とが織りなす風景が、あるときは精緻に、またあるときは細かい要素をそぎ落として、美しく描かれています。掲載の全作品が2020年以降の製作とのことですが、その風景は現代に近いもののほか写真等を題材にした昔の様子を描いたものもあります。
氏の作品の一番の特徴は画の中の「すべてが曲がっている」あるいは「斜めになっている」ところです(なぜか表紙の作品が一番曲がっていません)。
弧を描く電柱、ゆがんだ店舗、四角いはずの鉄道車両も少し斜めになっています。でもその「曲がり」によって、乗り物には速度感、建築物には活気、そして街全体が人々を包容しているかのような感覚も生まれています。
作品によっては何もかもが曲がっているのに、一切の違和感が無い、その不思議さにも心が引き込まれます。
私は作者がX(Twitter)で作品をアップしているのを見かけてそのご活動を知りました。本書に収められている東京周辺や湘南あたりの風景では自分が訪れたことのある場所がいくつもあり、それらがイラスト化された嬉しさを噛みしめて観ることができます。また、自分の知らなかった場所も作品を拝見してぜひ行ってみたくもなります。
作品のなかで最も注目したいのは電車や線路の「ゆがみ具合」・「曲がり具合」・「斜め具合」です。じつは本来「平ら」に見える本物の線路も、カーブの部分では「カント」と呼ばれる傾斜があります。このカントによって通過する電車がカーブを上手に曲がることができるのですが、本作品において作者はカントをさらに強調して描いているので、電車は実際以上の傾斜をもってカーブを通過しており、その過剰さが車両の躍動感を高めて鉄道好きの心をくすぐるのであります。
じつは私も鉄道写真であれば、「街と鉄道」・「人と鉄道」といった組み合わせで撮りたいと考えていたので、この作品集は最高の教科書にもなっています。写真では簡単に出来ない表現がなされている氏のイラストのパワーにはしびれます。
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