和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

iPhone7に印刷された「総務省指定」の5文字について

(Facebookに書いた2件分のエントリーを統合・修正し、こちらに載せました。)

 

青天の霹靂(へきれき)とはこういう時に使うのでしょうか。先日発表されたiPhone7の背面に「総務省指定」という無粋な文字が印刷されていました。  

  

クルマのウィンドシールドに貼られている、あのブザマだった車検ラベルでさえ小さく・目立たなくなってくれた昨今ですのに、この印字は無いだろうと思います。たとえ多くの人達がiPhoneケースに入れて使うとしても。メーカーがボディの工作に心血を注ぎ、ジェットブラックの仕上げにこだわった、そのド真ん中に「総務省指定」。いったいなんのギャグでしょう。だって「デザインの神は細部に宿る」って言うじゃないですか。本件について「僕は気にならない」とわざわざSNSで宣言しているみなさん、クルマのエンジンフード(=ボンネット)のど真ん中に「国土交通省指定」って書かれているようなものですヨ、これ。  

  

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・・・iPhone7の「総務省指定」の続きです。「漢字嫌いのこじらせおじさん」と思われてしまうと不本意なので。  

 
今回の「総務省指定」についてウェブを見てまわりますと、「気になる」・「気にならない」・「エヴァやシン.ゴジラ等の流れでこれも良し」・「海外から見れば漢字はクール」・「いっそのこと漢字の書体や文言をカッコいいものに変えたら?」など、結局は何かの課題に対してSNSで起りがちな「大喜利状態」に陥ってしまっています。システム上の様々な制約から発言者の論拠が見えづらいSNSゆえ、仕方のないことかもしれません。  
 
私としては
1.デザイン上の障害となる雑音的な要素は排除されるべき  
2.デザインについては少しでも気を許してはいけない  
以上ふたつの論拠から先般のエントリーを書きました。  
   
(ここで言うデザインとは機能とスタイルの総体を指します。)  
   
1.Appleは莫大な予算・期間・人材・技術を投入して製品開発を行い、それらすべての成果がiPhone7というプロダクトに「表現」されました。手のひらに乗る、この整った製品(氷山)の水面下には途方もない大きさの氷塊(苦労・苦心)が隠れているはずなわけで、iPhoneがデザインされるとはそういうことなのです。(※もちろんこれは他のメーカーのスマートフォンにも全く同様のことです。)ワールドワイドに展開されるiPhoneが、日本への現地適合作業において、くだんの総務省指定を刷り込まされた違和感。途方もないサイズの氷塊が支えている水面上の美しき一点をこの漢字5文字が台無しにしたという印象でしかありません。水面下の氷塊を思えば5文字がいかにデザイン上の雑音であるかを分かっていただけると思います。結果、iPhoneには雑音ですし、総務省にとっては少なくはないマイナスイメージ。双方が損をするようなこの印刷を誰が推進し「得」だと感じているのか想像がつきません。また、技適(技術基準適合認定)についてはiPhone内の「設定→一般→情報→法律に基づく情報→認証」をタップすれば画面に明確に表示されるようになっているのに、なぜ総務省指定を本体に刷らなければならないのか、現状では理解しづらいものがあります。  
   
2.SNS上で意見を述べる人達には優しい人が多い。芸能人がバッシングされていれば、救いの手を差し出す人がいる。事件が起きれば冤罪を疑う人がいる。これらは良いでしょう。「おれは心が広いから大丈夫」それも悪いことではありません。しかし、こと製品デザインに関しては、生半可なあいまいさ・優しさ・譲歩を介入させてはいけないと思うのです。小さな譲歩や気の緩みが原因で全体の均整を破綻させてしまうことがあるからです。一度でも「それぐらい許してやれよ」を受け入れてしまうと、収拾が付かなくなってしまうものです。また、前例等によってすでにデザイン上の雑音的要素が混入しているのであれば、積極的にそれを排除する方向に持ってゆく心がけも必要です。そうした緊張感を持って取り組むべきな製品デザインについて語っているところに「細かいこと言うな」といった揶揄(からかい)やお門違いの提案はするべきではないと思います。  
  
  
以上、読み返しますと厳しい物言いですが、こういった下地を明示しておかないと大喜利のネタのひとつとして埋没させられてしまうのがSNSの怖いところです。  
  
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補足します。私は大昔はApple製品のファンを自認していましたが、ここ十数年ほどはむしろ懐疑的な目で見ています。ですのでアップルファンとしてのバイアスは掛かっていない意見です。  
   
もうひとつ。「総務省指定」が印刷されるまでに何か感動のエピソードが有るのでしたら、受け入れることが出来るかもしれません。今のところそのような気配は感じられませんが。  
  
あとひとつ。「総務省指定」の手前にある「Designd by Apple in California Assembled in China」の一文はどうなんだい?と聞かれたら、それにも違和感があると言っておきます。(>_<)  

  

2017年9月21日 追記:

2017年4月の電波法改正により、「総務省指定」は技適と同様、端末の画面内表記で済むことになったそうです。これに関連してか、2017年9月22日に発売が開始されるiPhone8/iPhone8plusのボディー背面には「総務省指定」の表記は無くなることに。(また「Designd by Apple in California Assembled in China」の表記も無くなるそうです。)