和田哲哉 -LowPowerStation-

ステーショナリープログラムと信頼文具舗を運営している和田哲哉のブログです。

ゼンハイザーHD239は、まるで「室内履き」のようなヘッドフォン

引き寄せられるように
 
つねに「次に買うかもしれない小物」を見て回っている私です。今回は某店のヘッドフォン売り場にて3万円超クラスの製品をいくつか試聴したのですが、その日はピンと来るものが見つかりませんでした。しかし帰り際、商品ラックの端に掛かっている安価なヘッドフォンが目にとまったのです。ゼンハイザーHD239というモデルです。
 
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(ゼンハイザーHD239)
 
すでにゼンハイザーはHD25-IIを愛用しており、安価なものではPX200も持っています。ゼンハイザーであれば今後は上位の機種をと考えていたので、こうしたエントリーモデルと思われるものは選択の対象外でした。でもなぜか、この日はまるで引き寄せられるかのようにHD239の店頭サンプルを手に取り、試聴してしまいました。
 
製品に付いているポップ(説明書き)を見るとオープンエアタイプ(※注1)と書かれています。そういえばゼンハイザーには50年近く前に発表された HD414 というヒット商品、オープンエアタイプの名機がありました。
 
HD239の外観はご覧のとおり控えめなもの。イヤーパッドも(耳をすっぽりと覆わない)耳乗せ式なのでコンパクトです。そのような見た目とは裏腹に、本機はわりと広い音響空間と豊かな低音を再現する、なかなかのものでした。しかしその場では(正直に言って)「安すぎて」買うのをためらってしまったのです。自分の耳を信じれば良かったのに。
 
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その後ウェブでHD239の情報を見て回りますと音の評価はやっぱり高そうです。なにより試聴して以降、「あの音をもういちど聴きたい」という気持ちが続いていたのでした。そうしましたら、まもなくに不思議なご縁がありHD239の購入に至ったのです。
 
あらためて曲をひと通り聴いてみました。ジャズやピアノは本機の得意分野。アコースティックベースの弦の響きは豊か。ピアノもこまやかな再現性には劣るものの雰囲気で聴かせてくれます。いっぽう私の好きなYMOを始めとする電子音楽系は少し曇った感じになります(それが標準と感じる人もいます)。サイズの割に低音は過大なので耳が弱い人は小さな音で聴くか再生機での音質調整が必要です。ただし、それは小音量時でも低音がしっかりと出ていることになり、ラウドネス機能(※注2)的な効果といいますか、音に物足りなさを感じないで済む利点もあります。
 
そうした長所と短所を把握し静かな所で音量を控えめにして聴くと、柔らかな音に包まれて気持ちの良いものです。
 
いちおう仕様を調べたところ、唯一、ドライバー(=スピーカー部)の直径が公開されていないようです。検索すると分解したドライバーらしきものとイヤーパッドが並んでいる写真が見つかりました。この写真から、ドライバーはちょうどイヤーパッド表面にある丸い「切り抜き」と同じサイズに見え、直径30mmのようです。直径30mmでこれだけ量感ある低音が出るのだと、いまいちど感心しています。
 
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(オープンエアタイプのイヤーパッド部分)
 
この身近な感じは「室内履き」?
 
もちろん良い音とは言っても「このサイズ・この価格のわりには」という前置きが付くわけですが、オープンエアタイプのヘッドフォンは高級な機種になるほど本体が異様に大型化し、場合によってはヘッドフォンアンプ(※注3)が必要という話にもなってまいります。それに対し、HD239はオープンエアタイプのヘッドフォンらしい音づくりを実現しつつ、家事をしながら・寝転がりながらというような気軽な使い方を可能にしています。イヤーパッドが小さいのでメガネをしても大丈夫です。この身近さ…例えるならば「室内履き(スリッパ)」のような感覚。ヘッドフォンをいくつ持っているの?と聞かれるのを覚悟で、リビングルームで使用するためだけにHD239を購入する、こういった使い分けは悪くないなと思うところです。
 
最後に、私がいま気になっているゼンハイザーの上級モデル。それは「MOMENTUM WIRELESS」です。これまでMOMENTUMシリーズにはあまり興味が無かったのですが、Bluetoothワイヤレスモデルが登場し、しかも内外での評価も高いということで注目しています。一部で言われていた初期不良もどうやら解決している模様。はたして実機はどのような感じなのか。
 

 
(※注1): 近ごろのヘッドフォンは、周囲の環境音を断ち切って音楽情報だけを使用者に聴かせるため、また同時に再生音が漏れて周囲に迷惑をかけないために、ドライバー(音が出る部分)をケースで囲い、ドライバーと耳の間にも音漏れを防ぐイヤーパッドをしつらえ、ドライバー内外の音の行き交いを防いだ「シールドタイプ(密閉型)」が多くなっています。いっぽう、ドライバーをケースで囲わず、原理的には「素のままのドライバーが耳の上に軽く乗っているだけ」という形式のものを「オープンエアタイプ」と呼んでいます。オープンエアタイプは、遮音をする部材が少ないので軽量・小型に作りやすく、またケースを考慮したドライバーの音設計を必要としないため、クセの無い低音を再現しやすいという特徴があります。(ドライバーのユーザー側はシールドしドライバーの背面側はオープンエアという折衷タイプもあります。)
 
(※注2): 音楽の音量を一律に小さくすると、特に低音成分の減少によって音楽全体の量感が不足し、リスナーの満足感が得らえれにくくなる問題に対応するため、特定の低音域をスイッチひとつで補うようにした機能を「ラウドネス機能」と呼びます。昔のオーディオ機器に時々備わっていたスイッチですが、最近ではあまり見かけません。
 
(※注3): ヘッドフォンを最適な音質で鳴らせるために用いられる、追加の装置です。通常のオーディオセットに接続するものや、パソコンのUSB端子からのデジタル出力ををアナログ信号に変換したうえヘッドフォン端子に出力するもの、iPhoneやポータブルオーディオに接続する携帯型など、さまざまなタイプがあります。