和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

文具王の新刊

「文具王・高畑正幸の最強アイテム完全批評」

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高畑さんの新刊です。

筆記具・ステープラー・カッターナイフ・テープディスペンサー…同種他製品との機能的な差別化を謳う30以上の文房具・関連商品を高畑さんが取り上げ、詳しく紹介しています。日経トレンディ(ウェブ版)の連載を元に再構成・ムック化したものと思われます。

紹介文を読むと「〜本書は一般的な製品レビューとは少し違う「製品プロファイリング」のレポートだ。製品そのものから得られる情報をもとに、設計者は何を考えてこの製品を世に出したのか、設計意図や製作者の想いなどを、パズルを解くようにたどってゆく一種の思考(妄想)ゲームである〜」とあります。

実際、著者は製品を可能な限り分解し、また部品や形状処理の細部まで注目して、各製品が備える独自の特徴がどのような手段で実現されているかに迫り、そしてその調査結果のひとつひとつを読者に詳細に解説しています。

ここ最近文房具が再度注目され、多くの媒体で扱われるようになりました。うれしいことではありますが、時に「とっかかりやすくお手軽な取材対象だから」という残念な理由で取り上げられている様子であることも否めません。しかし日本の文房具製品には同じジャンルの中に数多くのライバルが居て、多くの工夫と苦労のもと、決してお手軽ではない過程を踏まえてこの世に生まれてきているものがいっぱいあります。そうした日本製文房具の作り込みの凄さやレベルの高さを、高畑さんが商品企画・設計の経験を踏まえ、ユーザーや関係者に伝えているのが本書です。高畑さんの細やかな解説をしっかりとフォローする、見やすく豊富な写真群も良きポイントになっています。

私は「テプラPRO SR3700P」の項、MAC対応で氏が盛り上がる様子にうんうんと頷きながら拝読。高畑さんはすでに開発者側の人ながら、明確にユーザーの視点で書かれている納得の部分でした。

本書は(一般的な常識からすると)かなり深い内容なので、これが文房具の趣味の標準であると誤解されてしまってはいけないと個人的には思う(笑)のですが、文房具の世界に近づこうとしている人には一度は読まれることをお勧めしたいですし、文房具以外の商品開発(たとえば電化製品・電子機器・クルマなど)に携わる方々にもなにかのヒントを与えてくれるものと思います。

ところで、これら記事はウェブ版でも拝見していましたが、やっぱり紙に、書籍になって手にして読めるのはイイですねぇ。で、これがまた裁断されてスキャンされてゆくのでしょうか。ぐるぐる…。