ことしは自分の趣味の中に「アンダー300ドル腕時計」というカテゴリーを作り、いろいろと楽しんできました。まずはそのカテゴリーについて説明した7月の記事を貼っておきます:
このようにカテゴライズした製品群において、いま私が一番気になっているのは米国の腕時計ブランド「TIMEX(タイメックス)」です。
TIMEXの製品はこれまで、夏服に合わせて選んだ「MIDTOWN CHRONOGRAPH」、デジタル表示の「COMMAND URBAN」、ダイヤル(文字盤)にスヌーピーが描かれた「MARLIN 」が手元にあり、本日のモデルが4つめとなります。
名称は「WATERBURY DIVE(ウォーターベリー ダイブ)」。グリーンのダイヤルが美しい、オートマチック ムーブメント(機械式・自動巻き)の製品です。品番はTW2V24700。
WATERBURYとは、TIMEXの前身となった社名のひとつ「Waterbury Clock Company」に由来しているようです。いま多くのユーザーに持たれているであろうTIMEXブランドへのイメージとは少し違う、「トラディショナル」で「ノーブル」な印象を作り上げるのにこのネームは役立っている気がします。
WATERBURYシリーズの多くは、秒針の尾部にこのシリーズ名の頭文字となる「W」のモチーフが配されていて、本製品でも見どころのひとつになっています。
「DIVE」というネームは「divers watch」から来ていると思います。しかしTIMEX米国公式サイトでは、これを本格的なダイバーズウォッチだとは言っていないようです。「(機械式自動巻き腕時計であることも含め)20世紀中頃のダイバーズウォッチをイメージした製品」という説明になっています。バンドの素材も革ですし。
私が本製品に一番惹かれたのは、やはりグリーンのダイヤルです。アナログ式時計のデザインで最初に目につくのはダイヤルの色だと思います。一般に腕時計のダイヤル色はシルバー/ホワイト/ブラック/ブルーを基調としているものがほとんどです。
そしてたまに各メーカーからグリーンやイエローあるいはレッドといったダイヤルの製品が登場します。
本製品のダイヤルには、グリーンの着色だけでなく「サン・レイ( sunlay )」という加工が施されています。極めて細いスジをダイヤルの中心から放射状に加えることで、ダイヤルの角度によって差し込む光の反射紋様がダイナミックに変化する仕掛けです。
グリーンのダイヤルはバンドの色によって全体の印象が大きく変わります。本製品に標準で備わっていたグレーのバンドはお似合いです。もしこれがブラックのバンドだと全体が沈んでしまうかなという感じがします。
そのほか、カラー系のダイヤルはシャツやアウターの色や質感でもトータルの印象が変化しがちです。…まあ、他人がそのあたりに注目してくれることなど無く、自分だけで楽しむところではありますが。
TIMEXはブランド内の各シリーズを際立たせる戦略を進めている様子です。
製品を開発するにあたっての、機能的分類/詳細仕様/サイズ/ムーブメントの違い/用途/TIMEXの歴史/製品化にあたってのストーリー/コラボレーションなど、腕時計を形作る様々な要素を大切にし、これら要素のどれを採用するかを明確にした上で各製品のデザインに落とし込んでゆく手法を明らかに感じるからです。
今回のWATERBURY DIVEについて言いますと「TIMEXのヴィンテージブランドであるWATERBURYの名を冠し、機械式自動巻きムーブメントやダイヤル周辺のデザインも相まって20世紀中頃のダイバーズウォッチを思い起こさせるモデル」というストーリーを背景にして開発されたと解釈してよさそうです。
以前ですと「TIMEXは雑多な製品群の集まり」と見てしまいがちだったものが、いまでは「それぞれのモデルに見どころのある、粒ぞろいな製品の集まり」に印象が変化しています。
メーカーが、メーカー自身に出来ることを理解し、またちゃんとユーザーを見ている感じが伝わります。
先述のとおり、見た目はダイバーズウォッチをイメージしていながらムーブメントは機械式の自動巻きです。個人的には電池のメンテナンスが不要なので都合の良いところです。安価な製品ですのでムーブメントについて特段言及する所は無いものの、日本製のムーブメントが採用されているそうです。いや、長い経験上それだけで十分安心です。
ケース側面からも見てみましょう。野暮ったさの無い全体のシェイプ、ケースのヘアーライン仕上げ、リュウズのロゴ刻印など、「結構頑張っている」と思います。分針と秒針がダイヤルの全周近くに到達する長さである点も私の好みです。WATERBURYの頭文字「W」を備えた秒針も確認できます。
ベゼルの黒いプレートは、表面の質感やそこに印刷されている数字や目盛りの雰囲気も含めて少々物足りなさを感じるものの、ダイヤル周辺がにぎやかなので、それらとのバランスを取っているのかもしれません。多くのダイバーズウォッチにありがちな「12時の丸いポイント」が無いのは個人的に大変うれしいです。
ベゼルは硬質なクリック感を伴って0.5分刻みで回転します。
TIMEXは製品の入れ替わりが早く、記事執筆時点で本製品もすでに日本の公式サイトには掲載されていませんでした。米国公式サイトには掲載されているものの JOIN THE WAITLIST 表記になっていました。私は今回は日本公式サイトにてオファー価格で入手できました。
米国公式サイトでの公開時価格が$279.と、TIMEX製品としては少し高価な部類になります。オートマチックムーブメント搭載のシリーズは高額になる傾向です。
それともうひとつ。厚手でシンプルなデザインのバンドには「S.B.Foot Tanning Co.」と「RED WING, MINNESOTA, USA,」の刻印が入っていました。そうですあの「RED WING」です。 TIMEX製品の中でバンドに革メーカーの銘が入ることは少ないので、その点からも(本製品の控えめな外観とは違って)気合いを感じます。
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