和田哲哉・LowPowerStation

考えて使う・楽しく使う

ニコンZfにはニコンのオールドレンズを

  

きょうは「ニコンのミラーレスカメラに同じくニコンの70年前のオールドレンズをセットした」という話題です。

  

購入から16ヶ月ほど経ったニコンZf

ポピュラーな2本のNIKKOR-Zレンズからスタートし、最新のフォクトレンダー、 AI NIKKORレンズも複数本加わり、まさにZfらしい使い方を楽しんでいます。

  

Nikon Zf + AI NIKKOR 50mm F1.8 S

  

AI NIKKOR レンズは40年近く前に設計された立派なオールドレンズなのですが、ひとつ問題があります。このシリーズは一眼レフ機、つまり元々はレンズの後端とフィルム面との間に「ミラーボックス」のあるカメラ向けのレンズだったため、ミラーレス機であるZfに装着する際にはレンズの後端とセンサーとの間にミラーボックスに相当する距離を空けるためのレンズマウントアダプターを必要とします。アダプターの厚さは29mmもあります。

つまりAI NIKKORレンズを使う時は、Zfの前面にマウントアダプター分の長さが追加されてしまうわけです。それでも全長をできるだけ短く収めようと、AI NIKKOR 50mm f1.8 のようなコンパクトなレンズを選んだりしていますが。

  

  

レンジファインダー機用のレンズに注目

この「レンズ突出問題」を少し和らげるひとつの方法があります。レンジファインダーカメラ用のレンズを使うのです。レンジファインダー機にはミラーボックスが無いため、そのぶん使うレンズマウントアダプターも短かく済みます。

例えばライカMマウントのレンズをZfに装着する際に必要なレンズマウントアダプターの厚みは12mmほどで、レンズ全体を短く収めるのに好適です。

  

そこまで考えていたところ、気になるレンズに出会いました。ニコンの「W NIKKOR」です。

これはニコンの昔のレンジファインダー機「S」シリーズ用のもので、ライカMマウントではない「Sマウント」ながら、対応するマウントアダプターの厚みは16mmで済みます。

 

レンズマウントアダプター( AI NIKKOR 用 / W NIKKOR 用 )

 

W NIKKORシリーズは70年以上も前に設計されたレンズになります。なにより、「ニコンの最新ミラーレスにニコンのオールドレンズ」という組み合わせがイイじゃないですか!

  

nij.nikon.com

  

W NIKKOR の「W」とは

ニコンのレンジファインダー機「S」シリーズに装着可能なレンズのうち、広角系に分類される焦点距離 28mm や 35mm のモデルに「W」の1文字が与えられているようです。

また焦点距離の単位を mm ではなくcm にしていて、それぞれ「2.8cm」,「3.5cm」と表記されています。

  

このシリーズのレンズを知ってから、「もし自分が W NIKKOR レンズを買うとしたら?」という想定でヤフオク、ebay、メルカリ等に出品されている各製品をかなり長い期間 watchし続けました。

焦点距離については自分が使う場面が多いと思われる35mmに絞ります。W NIKKOR の 35mm には、開放F値の違いで「F1.8 , F2.5 , F3.5」の3つのバリエーションが有ることがわかりました。

  

F2.5との出会いは無く

詳しくは別の機会にしますが、開放F値の違いによってこれら3つのレンズの流通価格に大きな違いが見られました。一番明るいF1.8が一番高く、コンディションが良いとされるものでは30万円近くになります。

古い製品ですから出品されている各個体のコンディションはさまざまです。値段が高いのにレンズの表面が傷だらけのものがあったり、どうみても修復不可能な「バルサム切れ」の物が何の言及も無く出品されている例もありました。

初めての W NIKKOR ですし失敗したくないので、私はまずF2.5を目指すことにしました。想定価格は五万円です。

けれどもかなりの日数を掛けてネットに出品されている物を調べてもコンディションの良さそうな個体は見つかりません。ネットで探すのには限界があるかもしれないと、とある洒落た実店舗(婉曲表現)に出向いてみたら、外観がキレイでもないF2.5に10万円近いプライスが付いていて「さすがにそれは…」ということもありました。

  

ご縁あってF3.5

W NIKKOR をあきらめかけていたころです。信頼文具舗がお世話になっている「五十音」さんに打ち合わせで向かった日、すぐ近くのカメラ屋のショーウィンドゥを眺めてみたら W NIKKOR らしき個体がマウント面を上にして置かれているではないですか。タグには「F3.5」と書かれています。念のため見させてもらうと、外観もレンズも相当にキレイです。

W NIKKOR 3.5cm F3.5

  

 

でもこの時点ではまだF2.5で検討していたのでこの日はパスしました。

その後しばらくF2.5とF3.5の違いをウェブで調べましたが、世の中で「銘玉」と認定されているF1.8やF2.5と違い、F3.5に関する記事や資料は見当たりません。しかし「X」でとあるポストを発見します。

  

  

ようやく発見しました。F3.5での撮影画像です。クセが少なくシャープな仕上がりです。F3.5はF2.5にくらべてボケの効果には期待はできないかもしれないけど、ここまでクリアに撮れるのなら大丈夫かもしれないと判断ができました。

かいと。 さん、ありがとうございました)

  

まだ売れないで残っていることを願いつつ「Sマウント→Zマウント」のレンズアダプターを急いで購入。Zfも従えて再び銀座のお店に向かいました。

はたして、外観は美しく、各部の動作はまったく問題なく、なによりレンズがクリアなそれは私の到着を待ってくれていました。

Zfにも無事装着でき、お店で軽く試写もさせてもらえました。これだけのコンディションながら各フリマorオークションサイトを下回る価格で入手できたのです。

  

Zfにセットしてみた

まずは前述の「RAYQUAL(レイクォール)」のレンズマウントアダプターを使ってレンズをZfにセットします。このアダプター1個でニコンSマウントレンズをZマウントのカメラに装着できて便利です。

  

最初の試写です。

Nikon Zf + W-NIKKOR 3.5cm F3.5

画面右の柱の紋様に注目。70年前とは思えない緻密な写りでびっくりです。周辺部の歪みもあまり気になりません。ボケに期待できないレンズということで、人物を流し、それを「ボケの代わり」としてみました。

  

ヘリコイド付きのアダプターに変更

W NIKKORのレンズ・シリーズは最短撮影距離が0.9mもあります。このままですとテーブルフォトや花などに接近しての撮影が難しいので、レンズマウントアダプターをヘリコイド付きの製品に換装しました。

(左)ヘリコイド付レンズマウントアダプター

  

Sマウントのレンズにヘリコイド付レンズマウントアダプターを使う場合、2つのレンズマウントアダプターを組み合わせる必要があります。

今回は、左の「 NEWYI・ヘリコイド付マウントアダプター(ライカMマウントレンズ/ニコンZマウントカメラ)」に右の「焦点工房・マウントアダプター(Sマウントレンズ/ライカMマウントカメラ)」を追加した様子です。

  

ヘリコイド付アダプターの導入により最短撮影距離は 0.3m 前後まで短縮します。そのおかげで、近接撮影によってF3.5のレンズながらボケ効果を得やすくもなりました。

NEWYIのヘリコイド付アダプターは黒のパーツに赤いリリースボタンのアクセントがイイ感じです。

  

  

Zfが理想のルックスに

すっかり長くなってしまいました。以上のストーリーを経て「ニコンZfに70年前のニコンのオールドレンズ」をセットし、加えてレンズの全長もコンパクトな、理想のルックスを得ることができました。

Zfの理想のルックスを得ることができました

W NIKKORシリーズは製造時期によって外観や素材におけるいくつかのバリエーションがあります。私が購入したのは「中期」にあった真鍮素材のモデルです。その素材からレンズの重量は大きいものの、銀色の外観はZfのブラックボディーとのコントラストが美しく、「オールドレンズを付けていますよ」という分かりやすさもあって気に入っています。

(W NIKKOR はその後「軽量アルミ素材+ブラックペイント」のバージョンに引き継がれてゆきます)

  

  試写2

右上部分の、ビルの「ファサード」の繊細さ

  

試写3

最新ミラーレスのおかげで自然な色に

 

逆光撮影や絞り開放を行わなければ、撮影した画像はオールドレンズで撮影したとは思えない仕上がりです。カラー撮影であっても最新のミラーレスカメラの優秀なオートホワイトバランスの支援によって自然な写りになります。

そもそも今回の W NIKKOR の目的は「オールドレンズらしい写り」よりも「機材のルックス」に重きを置いているので、自分には都合が良いものです。

  

これからしばらく、このレンズでいろいろ撮ってみたいと思います。

  

  

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