和田哲哉・LowPowerStation

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突然の引退発表があった小田急VSEに乗車

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4年ほど前に書いた小田急の指定席特急「ロマンスカー」の記事(計6件)は現在もよく読まれています。

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これらの記事中で私が「ロマンスカーのフラッグシップ」と表現した「VSE」。昨年末にまさかの引退発表がなされました。(下記は4年前のLPSの記事)

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今年の3月には定期列車としての運用を終えるとのこと。にわか鉄道ファンの私にもびっくりです。

  

毎年せっせと新型が登場し導入される小田急ですが、これまでのパターンでは多くの車両についてその運用期間は短くはなく、30年以上活躍するものもたくさんありました。華やかな指定席特急のロマンスカーであっても、たとえばLSE(7000形)でしたら38年もの長寿命でした。

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しかし今回のVSE(50000形)の運用開始は2005年ごろ。まだ「17歳」くらいです。従来のロマンスカーのスタイルから大きく変化を遂げ、発表当時かなりの話題となったVSE。いまもデザイン上の古さを感じさせることは無く、思いのほか早い引退は残念でなりません。

今後の車両の保守が難しくなったのが引退の理由だそうです。

  

私はいわゆる「撮り鉄」=鉄道写真を撮る趣味は無くて、ただひたすら、新宿から帰る時は毎回ロマンスカーを利用する「乗り鉄」(?)です。

もともと運用本数の少ないVSEに出会えるとラッキー。室内の暖色系の色調が好みだったり、一見すると平板な椅子の座り心地が私にはフィットしていたりして、乗車出来るとなれば、できるだけ最後尾の展望席を確保してきました。

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VSEの後部展望席(新宿駅から出発まもない様子)

ただし外観については、正面から見た「顔つき」はそれほど好みではありませんでした。装飾を廃したシンプルフェイスは理解できるものの、VSEの「鼻先」周辺が少々マノビした印象だからです。

スケッチ段階ではカッコ良かったのだろうと思います。実際のサイズを支える造形技術(あるいは処理)が追いついてないような気もします。ここだけは、もう少し動態デザインに倣ってほしかった感じです。

  

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少々「間延び」した印象のVSE前面

いっぽう、先頭車両側面の伸びやかなスタイルはVSEの大きな美点です。私鉄のなかでこれだけ優美なスタイルを備えた車両って少ないのではないでしょうか。

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VSEの見どころは伸びやかな先頭車両側面

  

VSEのもうひとつの見どころは「連接車」という仕様です。一般的な鉄道車両は、車体1両に2組の「台車」を備えて車体を線路上で支え、走行しています。台車とは、ひとつで2軸の車輪を組み合わせたもの。1車両で2組の台車、合計4軸の車輪で支えています。

しかし連接車は隣の車両との間に台車が備わってる、つまり台車を両隣の車両と共有しています。(連接車の詳細が気になるかたは、すみませんが各自でお調べください。隣接車両近傍の座席における独特の乗り心地はVSEならではのものです)

  

この連接車という方式は、1957年に運用が開始された初代3000形ロマンスカー以来の伝統と言える技術で、現在運用されているロマンスカーにおいてはVSEのみがこの方式を継承していました。VSEが引退してしまうと、小田急から連接車が皆無となるはずです。

連接車は車両の定期点検時の扱いが大変そうです。けれども「小田急自慢の鉄道車両技術」のひとつが消えてしまうのには寂しいものがあります。

長年にわたり小田急の車両を見守られてきた生方良雄氏が昨年逝去されました。そのこととVSEの運用終了を重ね合わせてしまう小田急ファンは私だけではないと思います。

  

追伸(2022年1月10日):

このところの私のモヤモヤした気持ちに応えてくれるかのような週刊文春オンラインの記事を見つけました。鉄道系の記事において私が信頼を置いている杉山淳一氏によるものです(ありがとうございます)。

  

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